離島振興地方創生協会は、離島地方に対して食のバリューチェーン構築、生産基盤並びに生活基盤の整備を目指して取り組みを推進している。本年4年目を迎えるが、長崎県の五島列島、壱岐、対馬での成功モデルを創ることに非常に成果を上げている。
販路拡大を図る展示会へ積極出展
日本アクセス、三菱食品、ヤマエ久野、日本食糧新聞等への生産者の展示会出展などを通じて、流通小売・メーカーと連携した販路の拡大を図っている。
■7月26日 ㈱日本アクセス主催 総合展示会(さいたまスーパーアリーナ)
■7月27日 三菱食品㈱の総合展示会(東京ビッグサイト)
■9月6-7日 本食糧新聞フードソリューションズ(インテックス大阪)
長崎五島列島 現地リポート
農産プロジェクト、水産プロジェクトなどの取り組み、主な生産者の状況を、現地での取材も交えてレポートする。(取材日:7月31日-8月2日)
【農産プロジェクト】
五島・壱岐市では、2030年までに、五島さつまいもを500t、五島ほめられカボチャを1000t、五島ブロッコリーを230t、壱岐長崎黄金を700t、壱岐ミディアムトマトを100t、それぞれ生産する為の大型プロジェクトをスタートさせている。「ロック・フィールド」との取り組みも開始している。
■有機野菜農場(いきいきファーム)
五島における大型プロジェクトも始動しており、福岡ソノリクとJA五島の協業で「五島アグリイノベーションセンター」の建設を目指している。さつまいもの生産量拡大を図り、高付加価値化の加工を行う予定であるが、センターを物流拠点にした儲かる一次産業への挑戦をしていく。これにより五島農業ブランド化を実現するバリューチェーンの起点を目指している。
■五島アグリイノベーションセンターの建設予定地
【水産プロジェクト】
水産プロジェクトとしては、特に養殖魚とアオサ養殖に取り組んでいる。
長崎県は有数の水産県であり、長崎離島の天然魚・養殖魚の出口戦略の要ともいえる販売は、ヤオコー、ライフ、万代等で積極的に展開されている。鮮魚物流の構築の取り組みも強化している。
「五島水産」の養殖魚は、地元の椿の葉を餌とした養殖が特徴でもある。「橋口水産」では、夏場でも「寒ブリ」並みの美味しさのブリを養殖しているが、自社開発した高機能サプリメントの配合により、良質の脂を豊富に蓄えた肉質を実現している。
また、水産加工としては、「しまおう」のアジ、エゾ、アゴ等のすり身冷凍品がスーパー各社で取り扱いが増加している。
■鯛福(きびなご冷凍処理)
■橋口水産(まぐろ)
■五島水産(養殖-つばき鯛)
■しまおう(水産加工-すり身)
新上五島ではアオサ養殖プロジェクトを開始しており、アオサの大量生産を視野に入れた販売・商品開発の可能性の実証実験をしている。
■あおさ養殖プロジェクト
【五島列島名産品】
五島では、あご(飛魚)を原料とした「あごだし」などの調味加工品も豊富で、そのあごだしで食べる「五島うどん」も人気商品。
■五島手延べうどん
「矢堅目の塩」は、五島近海の海水を100%原料に、蒸発法等で水分を除く事で塩分を濃縮し、結晶化させた海水塩だけで時間と手間をかけて精製している。
■矢堅目の塩
「アグリコーポレーション」は、「オーガニックをプラットフォームとした街づくり」を目指して、赤ちゃん向けに有機栽培したさつまいも作りをしている。さつま芋エキスパートして、赤ちゃん向けのオーガニックベビーフード等を開発。
■アグリコーポレーション(有機栽培さつまいも加工品)
「小島商店」は、上五島で無農薬・無肥料による水耕栽培の「発芽にんにく」や秘伝の製法でつくる「島こんにゃく」等を製造している。
■小島商店(発芽にんにく・島こんにゃく)
五島列島の南端福江島では、「オーガニック茶葉」を生産している。離島という特性上、周りは海に囲まれ、水も空気もとてもきれい。後世に安心安全で豊かな食を残したいという思いから、耕作放棄地からスタートし、オーガニック農法にこだわっている。
■オーガニックアイランド五島
「五島つばき蒸留所」は、潜伏キリシタンの名残の半泊教会の横に、キリンから独立した三人の思いを結集して作った、究極のクラフトジン「GOTOGIN」。17種類のボタニカルのすべてのポテンシャルを引き出す為に、専用の蒸留器で丁寧に作られており、超軟水を使用し、椿の炭で濾過して使用している。椿の花でアロマを包むことを表現したツボミボトルも素敵な逸品。
■五島つばき蒸留所(ゴトジン)
さつま芋の産地でもあることから、「五島列島酒造」の芋焼酎も人気商品である。五島列島の原料を100%使用した本格焼酎の製造及び販売を行っており、「五島芋」「五島麦」が代表商品。2017年には、日本初となる天然の椿の花酵母を使用した麦焼酎「五島椿」を発売した。
■五島列島酒造
長崎五島でのバリューチェーン構築は、日本アクセス、三菱食品、ヤマエ久野の展示商談会、ヤオコー、万代、ライフをはじめとした長崎離島フェア等の開催、会員メーカーの商品開発支援などにより、3年間余りで大きく拡大してきた。
今後は、農産水産資源を中心とした生産基盤整備への取り組みの更なる強化が課題である。惣菜メーカーとしても、美味しく、差別化した原料を活用したデリカ商品開発の動きが活発化していくことが期待される。