ワイズマート新店舗「ららテラス」 及び 2023年度経営課題と取り組み状況―吉野社長に聞く

11月29日「ららテラス TOKYO-BAY店」オープン

ワイズマートは千葉県駅前や駅ナカ立地を中心に、平均売場面積170坪のコンパクトな食品スーパーマーケットを展開し、業界の約2倍近い坪効率経営をしている企業であるが、11月29日にJR南船橋駅前に新店舗「ららテラスTOKYO-BAY店」をオープンした。39店舗になる新店舗ルポ(鈴木潤也店長の取材)と共に、ワイズマート吉野社長に23年度の経営状況などを取材した。

ワイズマートは、「三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAY」の核テナントとしてオープンした。目標売上高は年間12億円、近隣の5千世帯がメインターゲット。約650㎡の店舗に、取扱商品数は約8,000SKU、構成比は生鮮60、グロサリー40である。店内には大型のデジタルサイネージも導入し、販促情報・商品情報を流して、訴求力を高めている。 

 
【売場特徴】

青果コーナーでは、水耕栽培レタスを始めとして、千葉県野菜などを品揃え。

 
ワイズマートのパワーカテゴリーである精肉コーナーでは、品質・価格・量目の品揃えが豊富であり、店舗来店客の年齢構成を勘案して、量目も平日と休日で変化を持たせており、競合店と比較して、豚肉・鶏肉で差別化が図れている模様。

 
鮮魚コーナーでは、豊洲で買い付けした新鮮な魚が、リーズナブルな価格で品揃えされている。そのネタを使い、インストアで作っている寿司も人気の商品。
開店後の売上構成比では、約6%強(他店の倍)を稼いでおり、近隣のシルバー層にも非常に支持されている部門になっている。なお、細巻寿司はセンターからの供給。

 
デリカ・惣菜コーナーでは、店内での揚げたて商品やインストアでの手作り弁当、おにぎりが並び、CVSなどとの差別化を図っている。弁当系の構成比がやや高い傾向。開店1ヶ月でのデリカ構成比は10%弱である。
デリカの中でも一押し商品が、「国産豚肉と玉ねぎを使用した 浦安メンチカツ」である。「浦安メンチカツ」の拘りは、原料の国産豚肉を粗挽き(一度挽き)し、北海道産の玉ねぎにも拘り(カットサイズを大きめ)、つなぎも一切使用しない配合としている。また味付けにも拘り、ややスパイシーな仕上げにしている。

 
冷凍食品コーナーは大きくスペースを確保し、拘り商品も導入した。夏場に向けては、アイス等の需要も期待される売場である。近くに競馬場もあるが、近隣の競合店と酒、菓子では取り合っている状況になっている。
電子棚札も新たに取り組んでいる店舗であり、レジの打ち間違い防止に繋がり、かつ店員の価格変更の作業効生産性も図られている。

  

インタビュー:ワイズマート 吉野秀行社長

Q. 今年度の業績について
吉野:2022年上半期は相次ぐ原材料費の値上げに価格転嫁が遅れ、粗利ベースの悪化を招いていたが、下半期から価格転嫁が進み、1品単価の上昇と共に売上も回復してきた。本年2023年度は客数の回復が顕著となり、とくに5月のコロナ5類への移行以来、夕方・夜間帯客数の伸びが顕著となった。 猛暑の影響も夕方から夜間帯の好調さでカバーできた印象だ。
ただし単価上昇の反面、数量減の状況も続いており、客単価のアップが限定的なところがもどかしいところだ。 2023年度の累計値では売上前年比103.5% 客数102.4 客単価101.1 粗利額106.9%で推移しており、増収増益の着地を見込んでいる。
課題は買上点数の減少に対処することだが、 点数減の本質は、集客のための安売りによって、数量を売り、薄利での売上計上を続けてきたことによるものであり、 この1年間、無理をした売価での販売を自粛してきた「自然体の結果」であるので、これを元に戻すことはない。 むしろ、チラシや販促に依存しない、日々の商品の魅力を高めることで、買上げ点数・PI値を上げることを目標としたい。
 

Q. 全体、部門別ではどうか。生鮮、デリカ・寿司等の売上構成比は何%か。
吉野:ここ数年「生鮮・惣菜強化」に取り組んできた結果、生鮮構成比は54.4%に達している。 2023年度はグロサリー部門も堅調に伸び、大きな構成比の変化は見られないが、デリカ・寿司の構成比は8.8%で推移している。当社の売場面積の平均は173坪と全国のSMの面積の1/3程度であるので、惣菜・寿司売場に割ける面積にも限界はある。自然体で構成比の推移は見守っていくつもりだ。
  

Q. 原料、エネルギー高騰の状況はどうか。
吉野:多くの企業がそうであるように、2023年度は2022年度対比で電気代が大きく低下した。政府による補助金政策によるものと推察しているが、エネルギー価格や為替の状況を考慮すると2024年度は再び、大きな足かせになることが予想される。人件費も賃上げによって、賃金単価は上昇したものの、深刻な働き手不足によって、総人件費の伸びが抑えられている状況だ。 派遣や短期雇用で乗り切っているが、人員が確保できれば、その経費も大きくなることが予想される。 こうしたことを踏まえると、健全な粗利額の確保は最重要課題であり、商品の魅力を高めること・省力化投資を続けることは必須である。
 

Q. 顧客サービスとして、FSPを取り組んできているが、直近での施策状況はどういう点を強化しているか。
吉野:当社の「ありたい姿」の一つは、「コンパクトストアに磨きをかけてお客様のファン化を図りたい」というものである。店舗や商品の魅力を増すことを「根源的な価値提供」とするなら、 コロナ禍で中断していたお客様イベント(食育活動・料理教室・ワインフェスタ)による「付帯的価値」の提供も再開したところだ。上得意客からのモニターアンケートの継続と社内共有を経て、お客様の声を継続的に収集するよう努めている。
 

Q. ららテラス新店舗で特に取り組んでいること、重点課題は何か。特に、デリカテッセンをはじめとした生鮮での取り組みについて。
吉野:足元の商圏が薄い地域であり、かつ施設に駐車場がない状態での出店であるので、地域のお客様の「身近な冷蔵庫」として、生鮮品・惣菜の品揃えを強化した店づくりとし、リピーターのお客様の層を厚くしていく。
 

Q. 将来に向けて取り組んでいることは。
吉野:当社の競争力の源泉は現場のインストアで調理加工に携わる人財そのものである。今後、更なる人手不足が進行することを考えた時、セントラルキッチンの導入は必要不可欠であると考えている。 ただし、全てをセンターに集約するのではなく、現場業務の補完を担うハイブリット型のセンター構築を目標として準備を進めているところだ。